ひょんなことからアフリカへ

ひょんなことからアフリカへ行くことになった男がアフリカから日本に帰ってくるまでの日々を描いた日記。

アフリカ15、16日目〜ソマリランド編②③、ジブチ編①〜

荷物は、少ないほうがいい。

まず、恒常的に必要なものは絶対。

iPhoneとか、変換器とか、USBケーブルとか。そういうものをまず入れて、服や消費物は最小限である方が、快適度はともかくとして、移動が楽だ。

 


今回、ポカリスエットの粉末を持ってきたのだが、正直、かさばるし、重たい。ようやくだいぶ減ってきたものの、依然として重たいのは変わらない。はやく消費したいという気持ちから無駄にガブガブ飲んでしまって気持ち悪くなるリスクも持っている。

喉もかわいていないのにポカリスエットを飲むと、口の中にざらついた感触と甘みがまとわりつく感じがして、気持ち悪さの原因となる。

もちろん、歩いていて汗ばんだときはかなり役立ってくれる。おそらく、ポカリスエットの粉末がなくなったときにそのありがたみがわかるはずだ。

 


そこで、ぼくは感じた。その代わりになり、かつ、自分の故郷を忘れさせずにつなぎとめてくれるような、ある意味、心の安定剤ともなるものは「お茶パック」ではないかと。

ミネラル麦茶とか緑茶のパック。入れておくだけでお茶になってくれるやつ。あれは軽い。袋は立体だが、取ってジップロックにでも入れればよい。やはり、アフリカに来て思うのは、一瞬「あぁ、お茶とか飲みたい」という日本での生活の一部分。たいていは過ぎ去るが、ふと思ったときほどダメージが大きい。何もできない(そして何かで埋め合わせをする)ことがより自分のなかの気持ちを複雑なものにする。

 


服も持ってきすぎても仕方がないことがわかった。パンツをあるだけバァーっと持ってきたのだが、正直そんなにいらない。もう2枚は捨てた。

 

 

 

 


昨日の夜から、ソマリランドハルゲイサを出てジブチに向けて出発した。

 

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が、これがまた大変な大変な移動だった。友人はへっちゃらみたいだったが。

まず、道路を走らないのだ。というより、道路がない。

 

ソマリランドには道路がねェ!俺らこんな未承認国家いやだ〜、俺らこんな未承認国家いやだ〜、ジブチへ行くゥだァ〜。

実際、ガッタガッタの道なき道を14時間半かけて移動した。途中休憩もはさんだのだが、その休憩もぶっ飛ぶくらいの感動と事件がちゃんと起きるのがアフリカなのかもしれない。

あと、ソマリランドには日本語の書かれた車がめちゃ走っている。デイサービスのマイクロバスや、ようちえんのマイクロバスなど。

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ながのようちえんのバン前でソマリランド人が笑顔でいると思うと、世界は広く狭いと感じる。

 


さて、まず、24時前頃、いちど休憩に入った。

そこはもはや暗闇で、かろうじてついている電気とランドクルーザーのおぼろげなだいだい色の明かりのみが夜を照らしていた。

少しかげに入ると、夜空は星でめちゃめちゃ囲まれていた。運賃は20ドルほどだったが、正直ずっと価値のあるナイトサファリをしたような気分だった。南半球でしか見られない南十字星とか、でかでかとした北斗七星や北極星がはっきりと見られた。木星も見えた。

あの時だけは、お荷物になっていた一眼レフを出してあれこれ撮った。

 

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ちゃんと見られるかわからないが、天の川も視認できるくらいよく見えた。

 

 

 

そんな感動の瞬間もつかの間、再び出発してからはしばらく真っ暗闇のなか、星が大量に上に在るなかを走ってくれた。

そして事件は夜明けごろ、にわかに起き始める。

 

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ルーガヤという場所を越えたあと、あたりの地面はひび割れ、ランドクルーザーでなければはまってしまうくらい道悪な状況になっていた。と同時に、突然友人にトントン、と起こされたぼくは、夜が明け、外が暖色のグラデーションをまといはじめていることを認識した。おお、夜明けだ。半径数十kmには人工物がない。中心を除けば。

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360度、どこを見回しても何もない光景は、非現実的すぎて、そして疲れや眠気も相まって、少し不思議で幻想的で、「ここにひとりぼっちで置き去りにされたらどうなるんだろう」という、大いなる自然に相対した時に感じる畏怖、恐怖に似た感情すらあった。

 


ふと友人がぼくに話しかけた。

「この運ちゃんの方向、合ってると思う?」

ぼくは賛成とも反対とも言えなかった。

「う〜ん、どうなんでしょう」

でも、原理原則に従えば、車は北西に進んでいるべきである。すなわち、太陽が東から昇るのだから、太陽は常にぼくらの右側に位置していなければいけないことをぼくはしばらくして悟った。

そう、太陽はぼくらを右往左往していたのだ。

いうなれば、ぐるぐるしていたのである。

というのも、運転手はただただ「タイヤ痕」を目印に移動していたのである。

なんという安直な考え!たしかに経験も豊富であろうし、ぼくに出来っこないが、その時は「勉強しておくことは大事かもしれない」と思った。結局ぼくらが口を出し、途中までいい感じに進んだのだが、しまいには「もう一度ルーガヤまで戻る」的な状況になり、自らが作ったタイヤ痕を逆戻りし始めたのである。

これにはもう精神的な疲労すら覚えはじめ、ぐったりとしてしまったのだが、ここで奇跡的に1台のトラックが前から来た。

そのトラックは、方角的に明らかにジブチへ向かっている!

最終的にそのトラックのタイヤ痕を運転手は辿り、無事正規ルートに戻った。

 


いやしかし、あそこまで何もないところで迷うというのは、命の危険すら感じる。このままここで野垂れ死ぬか、なんて頭をかすかによぎったりもしたが、まだ死にたくないのでよかった。

 


そんなこんなでさきほどジブチに到着し、今はジブチのセントラルにいる。

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上はジブチのイミグレーション。

 

が、何もない。どこも開いていない。金曜日だかららしい。今日金曜日だったのか。

兵士はファマスを装備している。フランス特殊部隊が用いる自動小銃だ。

 


ジブチにいたい気持ちもあるが、暑いうえに観光地へのアクセスなども考えた結果、今日着いたものの今日出ることになった。

 


夕方6時ごろジブチを出発、飛行機でアディスアベバに向かい、しばらく休憩&あらかじめお土産を買ってしまうのと、いらないものをまとめて空輸する時間に充てたあと、再び飛行機で今度はタンザニアダルエスサラームに向かう。そしてさらにそこで休憩した後、タンザニア直下のマラウイに飛ぶ予定だ。

マラウイからモザンビークエスワティニ(旧スワジランド)、レソト南アフリカときて、そのあとは再び友人と一度別れ、ぼくはというとマダガスカルでビザいっぱいまで滞在しようかという予定である。

まあまだわからないが。

 


とにかく、あっという間に16日目も過ぎ去りそうだ。