ひょんなことからアフリカへ

ひょんなことからアフリカへ行くことになった男がアフリカから日本に帰ってくるまでの日々を描いた日記。

アフリカ27日目〜モザンビーク編⑦〜

朝2時30分に起床。漁師ではない。

不思議と眠いという感覚はそこまでなかったが、夜更かしした時のような独特の体調の感じはあった。3時30分にバス停に到着すると、そこには大型バスが3台。それぞれ行き先が違うようだ。バックパッカーの彼らも荷物をバスの下に入れ、4時にはバスに乗り込んだが、出発したのは5時ごろだった。

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こんな感じのバス。


6時30分ごろに警察らしきベレー帽にいちゃんにパスポート提示を求められる。オーストラリア人には提示求めず。その違いはなんやねんと思ったが、このあとも何度もこのベレー帽イベントが発生したのだが、みな等しくパスポートチェックを受けていた。

 

 

 

 


バスはダイソン掃除機のモーターみたいな音をたてながら、関ヶ原から決死の撤退を行う島津軍のような勢いでグングンと進んでいく。でも、電波の悪い時に見るYouTubeのように突然止まったりもする。

ふと、大型バスがガードレールも中央の車線もないちょっと広めの道路を100km近い速度で走るのを見ていて既視感があったのだが、あれだ、「スリルドライブ」である。

ゲームセンターで見たことがある人もいるかもしれないが、車を選んで街中(公道やハイウェイなど)をコースとして、時間内にゴールを目指すアーケードのレースゲームである。ここまでは他のレースゲームと一緒なのだが、ひとつ違うのは「事故という概念が存在し、事故ると損害額が出る」という要素。だから、タイムを気にし過ぎてすごいスピードで走って数台を含む大事故を起こせば、「キャ〜〜〜!!!!」という金切り声とともにクラッシュの瞬間がリプレイされ、同時に「重大事故発生」などのナレーションが入って損害額が出る。で、なぜかこのゲーム、大型車両も選択可能で、大型バスはもちろん、でかいトレーラーや、たまに街中で見かけるクレーン的なものを搭載したでかい重機トラックなども選択して走ることができるのである(しかも200km近くでる)。

あいにく、ぼくはこのスリルドライブで大型車両しか選んだことがない(目的はわかるだろう。ちなみにレースをゴールしたことは一回もない。目的が違うのもそうだが、案外、高いドライビングテクニックが求められるシビアなレースゲームでもある)。

よくバスで十字路に200km近い速度で突っ込むため、タイムアップの頃には損害額が3億円くらいいっていることもざらである。

とにかく、その経験があったから、このほっそい道をデカいバスが100km近く出して走っている光景をみると、ぼくからすればもうスリルドライブなのである。

ひとつ違うのは、“たぶん”事故らないというところだ。

スリルドライブではもはや事故るのが目的になっている。(ちなみにこのスリルドライブ、レース終了後に性格診断としてモラルや慎重さなど含めた六角形の診断が出る。ぼくの診断ではいつもモラルが0だった)

 


モザンビークは国土もでかくそこまで山がちでもないため、道が平坦で、あまりくねくねしていない。だからバスが余裕で100km出るのだ。しかもそれを維持できている。そんでもってそこまで車もわんさか走っていないため、時に「大型トラックvs大型バス」的な状態の走行を見ることができる。大型トラックの後ろに大型バスがぴたりとつけ、コーナーではともに走り、直線になった瞬間に一気に抜かす。日本でも高速道路で起こる現象だとは思うが、普通の道でこれがたびたび起こるのはかなりロックである。なんだかライコネンシューマッハのテストラップを見ているような感覚になった。ひっそりと。

 


そしてバスのクラクションがうるさい。基本アフリカの乗り物は密閉性がないので、大体どこか開いている。バスだとよりアバウトになるので、「プーーー!!!」がそのまま「プーーー!!!」の状態で聞こえるのでうるさい。日本なら「プーーー!!!」も「ゥーーー」くらいだろうが、アフリカじゃ「プーーー!!!」のままである。

 


途中から通路を挟んで隣に乗ってきたばあさんがいるのだが、まず、肌は黒い。そして金髪に近い短い白髪をしている。原色のTシャツに、ムキムキの腕(重いものを持ったりで、達人の腕をしている)、そしてバンダナをしていて、「もはや長渕剛では」と錯覚を抱いてしまった。ばあさんはすぐに降りた。

 


そんなネタを考えていたのもつかの間、ぼくはいつものようにバス酔いで気持ち悪くなった。乗車して13時間ほど経った午後5時ごろ、トイレ休憩(草むらトイレ)の際に、人生で初めて自らの意志でもって積極的に吐くことを決めた。この出来事の1時間ほど前、売店付きの休憩地点でライスとチキンを食べた。かっこんだのもあってか、でもお腹も空いていたので仕方なかったのだが、それがトリガーになったようだった。

結果、人生初の積極的嘔吐となった。

 


そこからは日暮れとともにぼくの体調は少しずつ落ち着き、気持ち悪さそのものは少しずつ安静になっていく。

しかし、実はバス車内、昼過ぎから比較的大音量で音楽が流れ続けており、おそらく乗客も「うるさいから小さくしろ」的なことを言って一時的に小さくなっても結局元の音量に戻るという小児さながらのいたちごっこかましていた。しかし、日が暮れてからは多少落ち着きめの音楽に変わったのは少し憎めないところである。そこは雰囲気合わせんのかよ、という。だったら止めてほしい。

 


そんなこんなで現在は21時。

ちょうど中間の中継地点に着いたようで、朝3時頃まで待機するらしい。

ナンプラ行きのバスも止まっていたりするので、ここがぴったり半分なのだろう。地図的にも、ここが半分くらいだ。

 


こういう時、寝袋やジャバラマットは効果的だ。一緒に乗っていたバックパッカーらがそつなくそれらを準備しているのを見て思った。

今度長旅をする機会があれば、テントとかも持った、ザ・バックパッカースタイルで行ってみようかな、いやいや、絶対軽い荷物の方がよい、そう思って、短くて質の悪い睡眠に入ることにした。