アフリカ35日目〜南アフリカ編⑥〜
朝6時だが目はバッチリ覚めた。
歯磨きもして、ヒゲも剃った。
この文面だけ見れば、サラリーマンと相違ない。
ただ、ぼくがいまヨハネスブルグにいることを除けば。
ここ最近、英語でのコミュニケーションがだいぶ自分に浸透してきたことがわかってきた。(何人かに「英語がグッドだ」と言われて素直に嬉しかったが、基本、日本人は英語が話せないという前提から生まれる評価だということを考えると、個人的にはよくても少し複雑にはなる)
とはいえネイティブスピーカーとの会話は結構きつい。非ネイティブのイングリッシュスピーカーなら、というくらいだ。
そんなことを考えていた瞬間、ぼくの目の前にとてもうまそうなオムレツが来た。まあ注文したので、もちろん、これは計画されたオムレツである。
英語がどうのこうのというのはどうでもよくなってしまった。普段、あまりちゃんと「朝食」を摂らないのだが、今日は朝食を摂ったと言えるだろう。もうひと眠り出来そうな気しかしないが、10時にはチェックアウト、13時30分にはバスに乗るので、ひと眠りしたらきっと、もう1日をヨハネスブルグで過ごし、そしてもう550ランドがバスチケットとして支払われることになるだろう。
チーズやトマトや豆などが入った具だくさんのオムレツを食べられて、今日はもう暫定満足日である。
というのも、今日はあとバスに乗るだけなのでもうすることがほぼない。
10時になった。
依然することがない。
今日はTaxifyのアプリ「Bolt」を使ってみようと思う。こっちの方がUberよりちょっと安い。しかも車の数もかなり多いのでヨハネスブルグではこっちの方がメジャーなのだろうか。
フランス人カップルは旅行最終日、ぼくもヨハネスブルグ最終日なので、一緒におみやげ探しをすることに。
ホテルを出て数分圏内で移動は終わったが、路上の露店やお店がとても充実していて、おみやげには困らないくらいだった。ぼくは買っていないものの、「あ、これのもうちょっとちゃんとしたやつがあったら買っておこう、あの人のために」と思えるものを見つけられた。
ケープタウンあるいはタンザニア、あるいは最後のアディスアベバで見つけられるように頑張ってみようと思う。
時間もあっという間に過ぎ、時間は12時30分を超えた。カップルと「また会おう!」と笑顔で別れるとともに、Boltでタクシーを頼んだらマジで10秒で来た。というのも、頼んで10秒でスマホの画面に「Arrived!」と表示され、外でサングラスをかけたドレッドのにいちゃんが「ダイキ!!!」とデカイ声で叫んでいたのだ。絶対いいやつじゃ〜んと思いながら、タクシーに乗ってホテルを後にした。
で、結果としていうとやっぱりいいにいちゃんだった。なんでも、スケートボードが好きらしく、日本のスケーターを絶賛していた。いま17歳くらいの、天才スケーターと言われる日本人がいるのだが、名前を忘れてしまった。彼の名前を出し、大絶賛していた。ぼくもNHKとかで特集されていたのを見ていたので、幸い話に乗っかれた。「あいつは超むずいトリックを簡単なもののようにやってんだぜ!やべえよ」と言っていた。確かにやばい。
そのあとはほぼ恒例の「アジア(主に日中韓)の人々嫌いあってんの?」話に。ほんとこの話がよく出る。ぼくはいつも「国(外交)レベルとなると嫌いあっているように見えるが、個人間ではきっとそうじゃない。少なくとも、ぼくは中国人も韓国人も台湾人も嫌いでもないが、アジアには複雑な歴史もある」とお茶を濁している。そしてアパルトヘイト博物館に行ったことを言うと、理解を示してくれた。そして「いいことだ。おれらも複雑な歴史があるんだ」と言ってくれたのである。こういう瞬間はいつも鳥肌がたつ。彼とぼくの間で、お互いに理解が生まれる瞬間に立ち会えたのである。別に数分後には忘れているかもしれないし、多少「こういうこと言っとけばいい」的な精神もお互いにあるのかもしれないが、それでもぼくはこうやって、ともに歴史の方に振り返り、同じ方向を見ながら人種などいとも簡単に超えて、一緒に話をできる瞬間がとても好きなのだ。そのためなら、言語を勉強する意義は十分すぎるほどにあると思っている。
その直後にデカめのバンが割り込んできて「ワオ!こいつ間違ってるぜメン」と言ってたのは落差があって少しおもしろかった。
結局、バス停のまん前で降ろしてくれて、同時に次のカスタマーから電話がかかってきていたのでさらりと別れた。いいにいちゃんだった。
時間は13時。
バス出発まで30分。ちょうど乗車手続きが始まる時間だ。素早く乗車手続きをすませ、SPARでデカコーラとデカポテチを買い、いざ乗車!
後ろについているのは荷物車。
どうやら乗車人数が少ないらしく「どこでも座っていいぞ」みたいな感じだったのでどこにでも座ることにした。結局、バスが2階層構造になっているのだが1階の一番後ろに陣取ることにした。1列につき2席シートがあり、通路を挟んでもう2席という感じ。
イスもリクライニングでき、空調も素晴らしい。バス内がめちゃいい感じの温度で、暑くも寒くもないのだ。ちなみに今22時なのだが、あたたかくて最高である。
特に最高なのが、やはり人が少ないことだ。1列につき、人がほぼ1人なのである。運がよい。ぼくは一番後ろの列を独占させてもらっている。安全的にはアレだが、リュックを枕に、完全に横になってしまえている状態なのだ。フルフレキシブルシートどころか、ワンエイティーリクライニング(スケートのトリックぽく)である。スーパー快適である。
というか、もう出発してから9時間近く経ったことが信じられないくらい快適である。これも全てワンエイティーリクライニングのおかげだろう。安全性とお行儀には謝っておくことにする。
今回のバス行程は13時30分発、翌10時着である。21時間くらいの長時間移動だ。でもこれは、いわゆるアフリカにおける長時間移動のきつい部類には全く入らないだろう。時間こそ長いが、快適度は今までのと比べて段違いである。さすがは南アフリカ代表すげえいいバス会社。強さを感じる。
ところで、バスに乗る直前、「もしもマイクタイソンが気のいい一般人になっていたら」みたいなおっさんに話しかけられた。彼もバス乗車ニキである。「カラテ教えてくれよ」と言われたので「子どもの頃カラテやってたよ」と伝えると喜んでいた。その後も、彼のスマホ画面上に表示されていたナビゲーションを消すのを手伝って「だからお前のことが好きなんだ!」と言われたり、「水ないか?」と聞かれたり「USBケーブル貸してくれ」と言われたりで頼られっぱなしだ。ちなみに水はないし、USBケーブルもない。(あるが、出すのが面倒だった。そのあと見たら自分のを出して使っていたので「なんだよ」とおもった)
道路もずっとちゃんとした道路だ。
乗りものとしての揺れはあるものの、道路が赤土とかによるガッタンバッタンはないので、ぼくも吐かずに済む。
考えれば長距離長時間移動は3回あったがうち2回吐いている。それくらいきついのだ。もちろん、ぼくがバスに弱いというのもある。
気づけば23時も過ぎた。
横になれるので、少し眠ることにする。