ひょんなことからアフリカへ

ひょんなことからアフリカへ行くことになった男がアフリカから日本に帰ってくるまでの日々を描いた日記。

アフリカ70日目〜激動の95時間(キリマンジャロ)編②〜

就寝中、なにかしらの理由で何度も起きることには苦痛を感じるのが普通だ。

それがキリマンジャロ登山中ならなおさらである。


ぼくの身体は、昨日の夜ごはんを食べ終わり、寝床についたあたりからおかしくなりはじめた。腹痛はまったくないのだが、腹が「うおおおおお」と鳴りはじめ、トイレが一気に近くなったのである。1度トイレに行って再び寝床についたのだが、、、

「突然の下痢」によるトイレ起床が夜に数回あったところから、2日目ははじまる。

腹を壊したわけではない。なぜなら、腹痛はまったくと言っていいほどないからだ。食べものに当たったのなら、確実にずきずきとした痛みも襲ってくるはずだ。ぼくはこの下痢の原因をいくつか予想した。

最終的に、おそらく「高山病薬」の服用による副作用であるとの結論に至った。

どこかの記事でも読んだが、高山病の薬を飲むとトイレが近くなるらしい。そして、登山前にモシにあるファーマシーで買った高山病薬(日本でも処方されているようなやつ)の副作用の欄にも、たしか下痢の症状があると書いてあった気がするのだ。それに、この薬は人生で初めての処方である。そう考えると、薬の副作用による下痢が起きたと考えるのは想像に容易い。ただ、ポジティブに考えれば、薬が効いているともいえる。この下痢もかなりきついのだが。(笑)
そのぶん水もたくさんとっているので、身体の循環はしっかりできているかもしれないと考えると、下痢になることも「高山病」になるのに比べればまだマシだと思えるわけである

そんななか、2日目。朝から雨が降っていた。
8時過ぎに出発。持ってきたユニクロのポケッタブルパーカーがその撥水性を十分に発揮してくれ、中身の服は全く濡れずに済んだ。歩きはじめて2時間半ほど経ったところで雨もやみ、その1時間半ほどした12時過ぎごろ、途中のハーフポイントに着いたのだが、その頃には青空も見え、しばらく日なたにいると暑く感じるくらいの天候になっていた。

しかしまあ、カンカン照りにもならず、雨も午前中にパラパラと降って、雲もいい具合にあった状態で登られたのは体力的な面でものすごく助けになった。
ハーフポイントに着いたところで、登山を開始してから24時間が経っていた。全く違う光景にあまり実感はないものの、一歩一歩進むごとに疲れと同時に頂上へと近づいている感覚は確実にぼくに刻まれている。

昨日の夜から発生した下痢の症状はいつ何時も襲ってくる。上でも書いたとおり、腹痛はまったくないので、これはもしかしたら本当に高山病薬の副作用かもしれない。ただ、これまたちょっと汚い話になるが、体験として書かせてもらうと、水などをのんでげっぷをすると、昨日の昼に食べたゆで卵のにおいがはっきりとするのだ。まるで、24時間経った今ですらなお胃の中にあって消化されていないかのように。ゆで卵なので、熱湯には通っている。おそらく、時間もそんなに経った代物ではなかっただろう。ただ、なぜまだ胃の中にあるような感覚なのだろうか。もしかして、卵が実は「アタリ」だったのだろうか?まあここまで疑いをめぐらすと、自分の体質としか言えなくなるし、実際、ぼくはお腹がけっこう弱い。高山病薬、登山の疲れ、めしの相性、全てを鑑みたとき、ぼくのお腹がこうなるのはわりと必然的な事象だったと思える。

 

そして今日の活動をはじめて7時間ほど経った15時過ぎ。

今日の目的地、ホロンボハットに到着。標高は3700メートル。ほぼ、富士山山頂である。幸い、薬ときつすぎないペース、ちゃんと食べたことによって、高山病的な症状は起きていない。特に、頭痛はまだ大丈夫だ。
今日はこの3700メートル地点で一泊するので、呼吸をしている間に身体に取り込まれる酸素の量が徐々に減ってはいくだろう。その時にどうなるか。

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ホロンボハットから見えるこの絵みたいな頂上は、マウェンジピークという、キリマンジャロにあるピークのひとつだ。ここも5300メートル近くはあり、ぼくらが目指すピークよりは低いものの、難易度は段違いに高いらしい。プロを雇い、政府から認可をもらわないと登られないらしい。
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もうぼくらは雲の上の存在である。
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そして、こちらが目指す頂上、ウフルピーク。

まだ2000メートル以上あるが、すこしずつ近づいてはきた。

 

さて、高山病についての話をすると、ここからが高山病にかかるかどうかの話になってくる。翌日から4000メートルを超える標高での活動となるため、身体にも結構な負担がかかってくるわけだ。ひとつの策にして最善の策は、たくさん水を飲むこと。これが不可欠だ。そして食べること。
昨日と比べてペースもつかみ、すこし回復したなかで、夕食は、願ってもないライス、そして肉や野菜のカレー状のおかず。このタイミングで馴染んだものが出てくるとかなり嬉しい。味も馴染みあるもので、腹いっぱい食べた。やはりたくさん食べてたくさん飲むことが大事だ。
夕食後はガイドと明日の予定について少し話して、20時過ぎには就寝。

これもちょっとアレな話だが、寝ているとき、ものすごい量のおならが出てしまった。しかしこれは、ぼくの大腸プロブレムの終焉が近しいことを意味していたのかもしれない。
先ほども書いたが、げっぷをしても、もうゆで卵のにおいは消えたのである。つまり今までのげっぷのにおいは、身体中に充満していたガスが原因で、そのガスが寝ている間に出切ったということになる。おそらく、薬の副作用の影響で身体のなかでガスが充満し、下痢にもなったのだろう。思えばお腹は叫ぶように鳴っていたし、おならを出すことも少し躊躇していた自分がいた。(もちろん、軽はずみに出してしまえばそのまま下痢も出てしまうかもしれないからだ。本当にきたない話だが、これらの症状は「キリマンジャロ登山をしながら」の話であり、家でゆっくりしている時の話ではない。ちょっとしたトラブルが、ペースを崩し、高山病発症につながるリスクを負っているのである(笑))

しかし、夜になり、下痢の症状もすこしずつおさまり、おならも出しまくったおかげで、昨日は4回くらい行っていたトイレも、1回のみで済んだ。
ここにきて、身体が好調になりつつあったのである。

これはかなりの朗報だ。口数も増え、気持ち的にも上向きになっていった。

 


寝ている時に気付いたが、深く息を吸うと肺や気管支のあたりがツンと痛む感じがする。これは、酸素濃度の低下によるものだろう。あと、空気が冷たいのもあるのかもしれない。これに関しては、しっかりと呼吸を意識しながら進んでいくことを忘れずにしていこうと思った。身体の順応も待たれるが、まずはできることから。

そんな感じで2日目は終わりを迎え、3日目へ突入する。