アフリカ6日目〜エチオピア編⑥〜
平成と令和の境目、ぼくは、アディスアベバにいる。
“シミュラクラ現象”というものがあるらしい。
ひとは、3つの点の集合を見ると、それを顔のように認識してしまうという現象。
(こんな感じ。少し気味悪くも見える)
それに似た現象として、“ん?もしかして小さい虫か?現象”というのがある。
もちろん、これはいま自分でつくった現象名である。壁についた黒い点を見ると虫と勘違いしておもわず身構えてしまう現象だ。20回に1回くらい本物なのがキツイところだ。
昨晩あたりから蚊にめっちゃ刺されるようになった。夜中、耳元にマジモンの“モスキート音”を聞く機会はまたとなくていい。
よく、コンビニ前などに“虫除け”の意味でモスキート音が流れているらしい(僕は聞こえない)が、本当のモスキート音を聞くと悠長に寝てなぞいられなくなるのである。
あの独特の甲高くも耳に残る羽音は、思い出すだけでもおぞましい。
しかも彼らは神出鬼没かつ、捕まえにくい。
スプレーなどの特殊装備をもってしてようやく互角といった感じである。
これだけ見ると蚊は伝説のポケモンと一緒じゃないか!ただ、決して伝説なんかではない。世界でみればとてつもない数が生息している。
近づいてきたことが音でわかったと思えば、こちらが気づいたときにはもう視界に紛れて消えている。見つけても、捕捉するのが精一杯で、時には自分の腕に止まっていることに気づく、なんてこともある。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。いや、蚊が舞って、蚊が刺すのみである。iPhone、“蚊”と打って蚊の絵文字が出てくるのはやめてほしい。
そういえば、数日前に例の“コーヒーセレモニー”に誘われた際にいたひとりの男が”Did you watch ヘェシ?“と聞いてきたので(なんのことだ?)と思ったら、どうやら“HACHI”の映画について言及していたのを思い出した。あのリチャードギアの。忠犬ハチ公のアメリカ版の。エチオピア人もあれ見て感動しているらしい。
それだけで少し想像できる場面がシュールなのだが、あとはテレビに映っていた映画内の男性を指して、
エチオピア人「おい、あの男知っているか?」
自分「いや、知らないなあ」
エチオピア人「アンジェリーナジョリーを知ってるか?あれは彼女の父親だ」
と教えてもらった。よく知ってるなと思った。
今はBARO HOTELというホテルに泊まっている。
アディスアベバのボレ空港からミニバスなどを用いて3、40分のところ。
1部屋300ブル・350ブル・400ブル・500ブルとあるみたいだ。もう少しバリエーションはあるかもしれない。レートは1ブルで4円と換算してください。
今はいちばん安い部屋に泊まっているからかもしれないが、その代わりとして、蚊に血を捧げなくてはならなかったようだ。
昨晩だけで顔に5カ所ほどやられた。幸いかゆくはならない。多分、しばらく顔も水でバシャバシャしているだけだから油分がしっかりと顔をプロテクトしているのだろう。よくわからないが。
というか、今日で平成が終わるというのが、あまりにも外の出来事で想いの馳せようがない。令和へのカウントダウンもなされるのだろう。
まさかエチオピアはアディスアベバで令和元年を迎えることになるとは。
後々「元号の代わりどきに何をしていたのか」話になればネタになるかもしれないな。
今やりたいことは、銭湯にでも行ってじっくりからだを洗い、パーマがクルックルになるくらい頭を洗いまくり、ざぶ〜んと大湯船につかりきって、サウナに行き、露天風呂にでも入って、またもどってからだを少し洗い、大湯船にだば〜んとつかって、風呂を出て上等なタオルでからだを拭いて出がけにコーヒー牛乳でも飲んで、帰りにラーメンとか定食でも食って、スマホで地図や路線図案内など見ずに、ポケットにものを入れて帰ることである。
書いていて笑ってしまった。想像して、やりたすぎてひとりで声を出して笑ってしまった。
7月25日の夜11時25分にエチオピアのボレ空港を出て、翌26日の夜8時25分に成田に着く。
「日本を発った時にはまだ平成の世であったのに、帰ってきたら年号が令和になっておる!なんということだ!」という感じで浦島太郎ごっこができる。
「あ、あれは、、、銭湯はまだあるのか?」と、タイムスリップしてしまった人ごっこができる。
ぼくが、平成の時代にあったものでやりたいことをひとつずつやっていって思い出していくゲームをやりたいので、付き合ってください。(笑)
お返しに「アフリカではこうじゃった、、、」エピソードをふんだんに用意します。
そういえば、今回のアフリカ旅行における最大のイベントともいえる“キリマンジャロ登頂“だが、スケジュールの都合上、7月の出国前ラストイベントとして迎えることになりそうだ。
どうやら7月から登山シーズンとして再開するらしい。
準備(といっても物理的な準備はツアー会社に一任になると思うが)なども含めて10日ほど見込むので、7月の中旬から25日までの間に入れるかたちになるだろう。
そうすると、ぼくに残されている時間は正味2ヶ月半ほどだ。
キリマンジャロがアフリカ旅行のラストに待ち構えているというのは、なんだかエモいじゃないか。ぜひとも乗り越えたいなぁ。
1秒1秒を心に留めて、伝えられるように準備しておこう。
全ての日々は、もしかしたらキリマンジャロのためにある、そう思っても面白いかもしれない。
今日は本当に何もすることがない。
まあ、今日も、である。
もちろん、友人が帰ってくれば、また動きだすはずだ。
ただただ待つだけの1週間なんて経験したことがなかったのだが、まさかアフリカの地でそんな時間が生まれるとは、奇想天外である。
待つだけというのは、なかなかに疲れる。何もしないというのは、25年間何かをしてきた生き物にとってはイレギュラーだ。
この数日間でイレギュラーをたくさん経験している。
どこかへ行く気力を湧かせるモチベーションはぼくの中にない。
きっと今は、冬眠ならぬ春眠状態だ。
インターステラーという映画で、主人公らが違う惑星に行って探索をしに行くシーンがある。そこは時間軸が異なっていて、数十分が数年分にあたる惑星で、そこでもたついた結果、戻ってきたのは20年以上先というシーンがあった。しかも、その拠点の方にはひとり男性飛行士が残って待っていたのである。
20年待ち続けるのに比べれば、1週間程度あっという間だ。(笑)
アディスアベバは日陰にいると意外と冷える。
現にいまホテルの出入り口にある日陰のソファに腰掛けているが、足は、4月の夜のフローリングの床にぺたりとくっつけている時くらい、ひえびえとしている。
そういえば、ちょうど対面にもホテルがある。そちらの空き状況でも聞いてみようか。
もしいい感じに空いていれば、うつってしまうというのも悪くはない。
というか、これを書いてしまったが最後、今日やるべきことを全て終えてしまった。
適当にぼーっとしていよう。
平成と令和の境目、アディスアベバは快晴である。